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「落語家が大変で、サラリーマンが楽」とも限らない

大事なことはすべて 立川談志に教わった第6回

 

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■なぜ会社をやめてまで入門したか

 入門した頃から現在に至るまで、耳にタコができるくらい聞かされまくってきたのが、「どうしてあんなにいい会社をやめてまで入門したのですか」という問いかけです。

 この質問を発する心の裏側には、「サラリーマンのほうが断然楽なのに、なんであんなに厳しい師匠のもとへ行ったのですか」、あるいは「大企業の安定した地位を投げ捨てたマイナスの大きさにあなたは気づいていないのですか」という気持ちが、根本にある場合がほとんどです。

 まあ、質問というより、楽な道よりつらい道を選んでしまったこちらの感性のなさに対する「詰問」ですな。

「落語家とサラリーマン」、この二律背反のような一八〇度違う生き様。比較のしようがないのですが、はたしてサラリーマンが楽で、落語家のほうがつらいと言えるのでしょうか。

 これに対する答えは、落語家を長年続けるようになって変わってきました。というより、落語家をずっと続けていると、サラリーマンと落語家は決して二律背反した生き方ではないという思いが、日増しに強まってくるのです。

 前座の当初の頃は、徒弟制度からくる戸惑いゆえに「サラリーマンのほうが楽だ」との考えに傾いていました。そりゃそうです。

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立川 談慶

たてかわ だんけい

昭和40(1965)年長野県上田市(旧丸子町)出身。1988年慶応義塾大学経済学部を卒業後、㈱ワコールに入社。セールスマンとしての傍ら、福岡吉本一期生として活動。平成3(1991)年4月立川談志門下へ入門。前座名立川ワコール。平成12(2000)年12月、二つ目昇進、談志より「談慶」と命名。平成17(2005)年4月、真打ち昇進。平成22(2009)年から二年間、佐久市総合文化施設コスモホール館長に就任。平成25(2013)年、「大事なことはすべて立川談志(ししょう)に教わった」(KKベストセラーズ)出版、以来、「落語力」「いつも同じお題なのになぜ落語家の話は面白いのか」「めんどうくさい人の接し方、かわし方」「落語家直伝うまい!授業のつくり方」「なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか」「人生を味わう古典落語の名文句」など「落語とビジネス」にちなんだ書籍の執筆。NHK総合「民謡魂」BS日テレ「鉄道唱歌の旅」テレ朝系「Qさま!」CX系「アウトデラックス」「テレビ寺子屋」などテレビ出演も多数。現在、東京新聞月一エッセイ「笑う門には福来る」絶賛好評連載中


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